【陣(ジン)】
意味
中世前期に、合戦の際に臨時に構築される城郭のことを「陣」と称した。
例
陣場、陣野、陣ノ上、陣内、陳内
他
歴史地名
現代地名
詳細説明
「陣(ジン)」の付く地名の由来には、伝統的には武士が合戦で陣を張った場所とされる例が多いが、調査したところ、特に長崎県内における「陣」地名は、しばしば川の近くや湿地帯、田んぼ、そのほか湧水が豊富な場所と関連していることが多く、このことから「陣」は、元々水を湛える(たたえる)土地を示していたのかもしれないと考えられるようになった。これは、土地に水が溜まる性質を持つ「湛(たん・じん)」や「水湛(みずたまり)」といった意味を含んでおり、かつては湿地や深い沼を指し、このため多くの地名に「陣」が用いられるようになったと考えられるのである。また、「陣ノ内」や「陣ノ尾」などの例では、新しい住宅地が開発される一方で、かつての湿地や湧水地形が残されていることも多く、これらの地名はかつての水際や湿地に関する特徴をそのまま現在に伝えている。さらに、好字二字令といった歴史的な漢字使用令の影響で「湛」から「陣」への字形転換が起きた可能性も指摘されており、この過程で「陣」は単に合戦の場を示すだけでなく、多様な自然地形を表現したとする考えが広まっているのである。